今日のリリーは、いろんなモノをよく「見る」犬になっている。
周囲を注意深く見渡している。
いつもそうなのだが、今日はまた格別なようだ。
なぜか?
お天気が良いからかな。
なんだ、おまえか、猿オヤジ。
本物の猿かと思ったわよ。
なんでズボンはいた猿があたしを引っ張ってんのかと、一瞬むかついたじゃない。
四方を見渡して、なにやら考え深げな様子。
青い空と樹の葉の緑に囲まれた新緑の季節、リリーはかつて見たものをまた見ようと目を凝らしているように見える。
満一歳のリリーが10年前に見たものを見ようとしているような、不思議な雰囲気。
ごく普通の晴天の好日が、特別な日に思えてくる。
青い空に誘われて、犬は犬の思いの内へ、ヒトはヒトの思いの内へ吸い込まれて行くような・・・
50何歳の私が、100年前に見たものを見ているような・・・
それはそうかも知れない。
青い空も、樹の緑も、1000年も前から、どこかにこんな風にあったものなんだからなぁ、たぶん。
そうして、それぞれの思いに耽っているな、という変な「共有感」が犬と私の間に在って、それがちょっと心地よい。
犬と一緒に、周囲を見渡していると、過ぎていく時間と新しい時間の交錯が懐かしくて新鮮だ。
へっ、それは猿オヤジの錯覚。