Beautiful girl dog recovery
治癒
Healing
回復というか復活というか、ともかく風邪の病状は去ったみたいだ。
咳もほとんどしなくなったし、元気も出てきた。
そろそろ外の風にあたっても大丈夫そうなので、今日から、日中は外につないでおくことに。
リリーに微笑みかける通行人には愛嬌をふりまき、リリーを無視する通行人にはむきになって吠えるという、いつもの日常にもどった。
町内のわがままな美少女犬が復活したのだ。
でも美少女と呼ぶには外見がゴツ過ぎないかな。
華奢な感じは微塵もないからなあ。
リリーは自身を美少女犬と思っているふしがある。
遠くを眺めるポーズが、物思いに耽っている少女っぽい。
デカイ体に反して、可愛っ子ぶりっこの表情をつくるところがそうなのだ。
だから、リリーを無視すると美少女犬としてのプライドが許さない。
わたしを注目してよ、とガンガン吠える。
もう、その時点で、おしとやかな美少女犬失格なんだけど。
美少女犬は失格だけど、元気印犬は回復した。
吠えても、咳き込まなくなった。
咳が出なくなったので、思いっきり吠える。
おヒスなリリー、と近所のワンちゃんが顔をしかめる。
I revived
遠くを眺めながら、リリーは何度もつぶやいた。
I revived
わがままな目が輝いている。
I revived
鼻をヒクヒクさせて、何かを嗅ぎ分けている。
人通りも無く、周辺が静かだと、たいくつの伏せポーズ。
下顎を地面につけて、かすかな骨伝導を楽しんでいるのかも知れない。
まだ病み上がりだから、このスタイルが知性派の私には楽だワ。
私の愛読書はメリメのカルメンよ。
メメメっていうゴロがすてきだワ。
そういえば、メメクラゲを世の中に幻出させた、つげ義春も好きだワ。
ハンサムなシェパードでも来ないかしら。
カルメンのような恋がしたいワ。