朝起きたら、雪が積もっていた。 |
雪が積もるまでは秋だったのに。
こうして一晩で、一面の雪景色が現れると冬になる。
その明快な変化に、ちょっと戸惑っているリリー。
今朝は妙にぼんやりしている。
一年ぶりの雪の感触。
八年目の雪の感触だ。
八年の記憶を思い起こそうとしているのか。
遠いまなざし。
リリーにとって、一年の節目が雪の季節。
雪が降って一年が始まる。
犬の顔はそんな面持ちである。
さあ、歩き出すか、とトボトボ。
やがて、足取りは軽快になる。
雪の匂いを嗅ぎまわり。
犬の顔が、生き生きとした表情に変わる。
雪が降ったことで生き返る。