階段に下が、このごろのお気に入り。 |
ではあっても、なにも特別なことはなかった。
たいしたお祝いも、してもらえなかった。
そのことをつまらなく思っているのか。
お気に入りの場所である階段の下で、横たわったまま動かない。
うつろな眼のしらけ顔。
実際に溜息こそつかないが、犬は顔で溜息をつく。
そんな感じ。
そんな態度。
そんな眼差し。
眠っているようで眠っていない。 |
そうなのだ、犬はいつも何かを待っている。
散歩の途中、じっと立ち止まって、遠くをながめたり。
家のなかから、駐車場の前の道路をそわそわしながら見つめたり。
犬は、自身で環境を変えることができないから、待つしかない。
何を待っているのだろう。
誰を待っているのだろう。
年老いたことで得たものはなんだろう?
9年間生きてきたことで得たものはなんだろう?
老成したのか。
老いぼれたのか。
犬は、その答えを待っている。
玄関のドアに頭を向けて何かを待っている。 |
犬の溜息顔。 |