2012/05/16

散歩と犬

静かな横顔のリリー。
まったく散歩に連れ出さないと、犬はどうなるのでしょうか。

それをリリーで試すわけにはいきません。
もちろん、そんなことを試した飼主はいない事でしょう。

でも、やむを得ない飼主の事情で、そんな境遇におかれたワンちゃんは存在するのではないでしょうか。

以前、近所に、そんな不幸なワンちゃんがいました。

飼主の一人暮らしのお年寄りが、足が不自由になり、犬の散歩が出来ないようになってしまったのです。
その柴犬系雑種のワンちゃんは、家の横の犬小屋に繋がれたまま、毎日を過ごしていました。

時たま、リリーの散歩でその家の前を通ると、そのワンちゃんは必死で吠えまくっていたものでした。
鼻の付け根に皺を寄せて、攻撃的な形相で、今にも飛びかからんばかりの勢いなのです。

たまったストレスが、このワンちゃんのヒステリックな攻撃性を高めているのだな、と感じました。
顔つきが険しく、瘠せて毛艶の悪いワンちゃんでしたから、無散歩状態からくるストレスがこの犬の健康をも脅かしていたのかも知れません。

ストレスいっぱいのワンちゃんに吠えまくられては、リリーにもストレスが溜まるので、そのワンちゃんの前は通らないようにしていました。

そのワンちゃんに吠えられている時、リリーはどうしているかと言えば、頭を下げて足早に歩き去るだけです。
ちらちらと、そのワンちゃんを見る他は、特別な反応を示しません。

散歩は犬にとって、重要な日課です。
散歩は、クサリに繋がれていることによるストレスを発散し、犬の見聞を広げ、犬の生活に活力を得るための大事なイベントです。

犬の散歩は、飼主にとっては、犬と楽しく触れ合い、犬をヒトとともに暮らしていけるように訓練する場でもあります。

私は、犬の幸不幸を左右するのが犬の散歩であると思っています。

しばらくしてから、その家の前を通ったら、犬小屋は片付けられて、そのワンちゃんの姿はありませんでした。