青空に吸い込まれそうな犬。 |
残雪の山の稜線の向こうは、抜ける様な青空。
あの青空の下に何があるのだろう。
あるのは、似た様な山ばかりさ。
リリーの背中が、そう語っている。
その似た様な風景を注視し続けるリリー。
ひどい近眼で遠くを見れば、みんな似た様な景色ばかり。
リリーは何も見ていない。
青空に吸い込まれていく感覚を楽しんでいるのだ。
この場所にずっと居続けたいという夢のような気持ち。
自然を楽しむとは、そういう事じゃないか。
自然の中に溶け込んでしまいそうなリリーだが、背中に漂う哀愁がそれを邪魔している。
現実を生きるとは、そういう事じゃないか。
現実を生きるとは、そういう事じゃないか。
犬の生活感。
犬にしか無い生活感。
リリーの背中には、現実と夢との見事な対比がある、ような気がする。
リリーの背中には、現実と夢との見事な対比がある、ような気がする。
リリーの隣にカモシカがやって来て、同じように並んで座ったらどうだろうか。
カモシカの背中の哀愁と犬の背中の哀愁の違いが目に見えて解ることだろう。
自然の中で生きる者の哀愁と、都会の日常から逃れて自然の中にやって来た者の哀愁。
お互い顔を見合わせて、ふっと力なく鼻で笑う。
それからリリーは私の方へやって来る。
カモシカは稜線の向こうの青空の下に消える。
お互いは、今日出会った事さえ忘れてしまうだろう。
山という夢の中での出来事だから。
背中の哀愁と言うタイトルも記憶も、それらはだんだん消え去っていく運命だ。
お互いは、今日出会った事さえ忘れてしまうだろう。
山という夢の中での出来事だから。
背中の哀愁と言うタイトルも記憶も、それらはだんだん消え去っていく運命だ。